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【旅エッセイ】パリ 6区 サン=ジェルマン=デ=プレ地区

2018年。年が明けて早、半月ですね。
歳を重ねるほどに年々時が経つのが早くなっていくとはよく言ったもので。例に漏れずわたしも、こんなに時が経つのは早いものだったかと、驚いておりまする。
新しい年も迎えたことだし、何か新しいことをはじめたい、はじめねば……と焦る気持ちも年々増える一方。
今年はまず第一歩目(?)として、マイペースにではありますが、旅エッセイというか旅先を舞台にしたショートストーリーを綴ってみようかと。

旅先で撮った写真に、そこから想像を膨らませた物語を――。
登場人物やエピソードはフィクションですが、舞台は全て本物です。

読んだ方が、少しでも「旅」を感じられますように。


Paris - Saint-Germain-des-Prés
パリ 6区 サン=ジェルマン=デ=プレ地区

【旅エッセイ】パリ 6区 サン=ジェルマン=デ=プレ地区_f0380712_01004312.jpg


パリに住む人は、カフェが好きだ。それもテラス席。
たとえ木枯らしの吹く寒い季節であっても、日差しが出ていれば、好んでテラス席を選ぶのだ。

パリ6区のサン=ジェルマン=デ=プレ地区は、パリ市内でも有数の高級住宅街。
昔は多くの芸術家や哲学者、詩人などがこの場所に集い、今でも変わらず営業する老舗カフェ「レ・ドゥ・マゴ」に足繁く通い、論を交わしたり、冷めてしまったカフェ・オ・レを前に執筆作業に没頭していた。
ピカソやヘミングウェイも自分のお気に入りの席をもっていたという。

流石に彼らと同じ頃からとは言わないが、白髪に真っ赤なコートがお似合いのエマも、長年このドゥ・マゴに通う常連客のひとりだ。彼女の特等席は、通りに面したテラス席。彼女もまた例に漏れず、"パリに住む人"なんだろう。もちろん雨足の強い日は、店内の窓際の、誰かさんの特等席をお借りする。

「ボンジュール、マダム。今日は朝からいいお天気ですね。ご覧の通り、テラス席も盛況です」
「ボンジュール、ジェローム。あら、でもこの席は空いているのね?」
「真っ赤なコートとルージュがお似合いのお客様の、特等席ですからね。どうぞ、おかけください」
「あら、まあ。ありがとう」
「いつもので?」
「今日はそうね……いえ、やっぱり、いつものショコラをお願いするわ」
「かしこまりました」

糊のきいた白シャツとビシっとした黒のギャルソン服をまとったジェロームは、過大な愛想笑いなどは一切なしに、けれど親しみのこもった声色で注文をとると、設えの美しい店内へと姿を消した。
彼もまた、長年このドゥ・マゴで働くギャルソンのひとり。今でこそ白髪の混じった頭をしているが、昔は深いマロン色の髪が美しい、好青年だったに違いない。それから何十年も経った今だって、もちろんダンディでハンサムな男であることには変わりないが。

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by cercatrova-n | 2018-01-15 01:04 | 旅の物語-Travel essay-

旅するシナリオライター/トラベル&シナリオライター・ホリタナツミのブログ。日々のことや旅のことなど徒然と……


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